愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 ザカリアスは本当にエリシアとここで暮らすつもりだったようで、食料や日用品の類も用意されていた。持ち込んだ荷物の中には、拘束具のほかエリシアを連れ去る時に使用した睡眠薬、そして発情効果のある薬まであった。さらに部屋の中には、エリシアの私物がいくつもあった。失くしたと思っていたアクセサリーや小物、それに古くなったからと処分したはずのハンカチや靴下もあって、ザカリアスのエリシアに対する執着心を感じておぞましい。

 気分が悪くなって小さく呻いたエリシアの肩を、ロジェリオが抱いてくれる。隣では、弟のヴィクトルも心配そうな顔をしていた。

 ヴィクトルは学園の講師との約束があったので早い時間に家を出たものの、途中で今日があの惨劇の日であることを思い出したらしい。

 急いで家に戻ったが、エリシアはすでにザカリアスと出発したあとだった。

 ロジェリオも同じ頃、ザカリアスが別荘へ誰かを連れ込んだようだという報告を受けており、病院を飛び出したところでヴィクトルと出会って一緒にここへ来たということのようだ。

 学生のヴィクトルでは騎士団をすぐに出動させることはできなかったが、ロジェリオが騎士団に連絡を入れ、ここまで引き連れてきたそうだ。公爵令息の婚約者が攫われたとなれば、騎士団が動かないはずない。

 以前にロジェリオが危惧していたように、今回はロジェリオを殺すことよりもエリシアを連れ出すことを優先したのだろう。エリシアの行動が前回と色々と違っていたことが、影響したのかもしれない。
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