愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた

 ロジェリオはエリシアをヴィクトルに託すと、拘束されたザカリアスのそばにゆっくりと歩いていった。何も言葉を発していないのに、ロジェリオからはひりひりとした怒りの空気を感じる。それはザカリアスも分かったようで、逃げるように身体を縮め、視線をさまよわせた。

「おまえは、自分が何をしたか分かっているのか」

 微かに震えた低い声には、隠しきれないほどの怒りが滲んでいた。ザカリアスは目を合わせたくないようで、視線を床に落としたままだ。

「誘拐、監禁、暴行未遂。どれも決して許されるものではない」

「だ、だってエリシアはおれのことを愛してるって……だから、だからおれは……」

「愛してないって、何度も言ってるでしょう。勝手な勘違いはやめて」

 ロジェリオが来てくれたことで気持ちが落ち着いたせいか、エリシアも冷静な声でザカリアスに伝えることができた。それでもザカリアスは、信じられないといった表情だ。

「でも、だって……エリシアは、おれを見て笑ってくれた。それは、おれのことが好きだからだろう! 愛してるって、そう言ってると思ったんだ!」

「直接、エリシアの口から聞いたことがあるのか? おまえのことを愛していると?」

 ロジェリオに問われて、ザカリアスは視線を泳がせる。当然エリシアは、そんなことを言うはずがない。

「っ直接は言われてないけど、だけど」

「全ては、都合のいい勝手な妄想だ。エリシアはおまえのことを愛してなんかいない」

 きっぱりと言い切ったロジェリオを、ザカリアスは憎々しげに見上げる。ぶるぶる唇を震わせながら、ロジェリオにぶつける言葉を探しているようだ。
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