愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 自分の部屋に移動することを提案しようかと考えていると、ぽつりと冷たいものが額に落ちてきた。見上げた空はいつの間にか暗さを増していて、雨粒が次々と降ってくる。
「大変、雨が降ってきたわ」
 エリシアはロジェリオの手を引いて急いで四阿へ戻ろうと声をかける。ロジェリオは上着を脱ぐと、エリシアを守るように覆ってくれた。
 四阿に入った途端、雨足が強くなった。分厚い雲のかかった空を見る限り、しばらく止まなさそうだ。
 目の前が白く見えるほどの雨を見つめて、ロジェリオが困ったようにため息をついた。
「これじゃあ、動けないな」
「そのうち、誰かが迎えに来てくれると思うわ。お茶を飲みながら、ゆっくり待ちましょう」
「そうだね」
 お茶のおかわりを淹れようと、エリシアはティーポットに手を伸ばす。ロジェリオのカップにお茶を注ごうとした瞬間、微かな違和感を覚えた。
 さっき二人でお茶を飲んでいた時よりも、彼のカップが移動しているような気がしたのだ。着席した時、ちょうど正面に置いていたはずのカップが、少し左に寄っているように思う。
「エリシア、どうかした?」
 ポットを持ったまま手を止めていたため、ロジェリオが怪訝な顔をする。エリシアは慌てて笑みを浮かべると彼のカップに紅茶を注いだ。
「なんでもないわ。ちょっと、ティーカップの位置が移動しているような気がしたけれど、気のせいかしらね」
「ん、そうだったかな」
 彼自身もあまり覚えていないようで、特に気に留める様子もない。やはり気のせいだろうと考えるエリシアの目の前で、ロジェリオはカップを口に運ぶと微笑んだ。
「この紅茶、香りがすごくいいね」
「そうでしょう。私もとてもお気に入りなの。柑橘の皮を香りづけに使っているんですって」
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