愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
血の気が引いて、ふらりとよろめいた身体を支えてくれたのは、弟のヴィクトルだった。小さかった弟はいつの間にか大きくなり、エリシアよりも背が高い。あの惨劇の記憶の中、見上げたのはヴィクトルだっただろうか。
「顔色が悪いな。ダナが心配していたけど、体調がよくないんじゃないか?」
「へ、平気。ちょっと眩暈がしただけよ。離してくれる?」
必死に口角を上げて、エリシアはヴィクトルから距離を取る。彼は心配そうな表情で、エリシアが椅子に座るまで見守ってくれた。
さっきヴィクトルの手が触れた場所を、エリシアはどうしても意識してしまう。
本当の弟だと思って接していたけれど、彼はもしかしたらエリシアのことを女性として見ていたのだろうか。
それに記憶の中にある弟よりも、なんだか距離が近いような気がする。
こちらをうかがう視線がどうにも落ち着かなくて、エリシアは窓の外を見つめるふりをして視線を逸らし続けていた。
「エリシアお嬢様、紅茶をどうぞ」
目の前に、ことりとカップが置かれる。穏やかな低い声の主は、執事のザカリアスだ。
「あ、ありがとう」
顔を見ることができず、エリシアはうつむいたまま早口で礼を言う。いつも『お嬢様』と呼んでくれる彼が、エリシアのことを親しげに呼び捨てにしたのだろうか。
考えても全く分からないものの、寒くもないのに肌はずっと粟立っている。
口から飛び出してきそうなほど速い鼓動をなんとか落ち着かせたくて、エリシアはゆっくりとティーカップに手を伸ばした。
ソーサーから持ち上げようとした瞬間、ふわりと爽やかな香りが鼻をくすぐった。柑橘を使った、紅茶の香り。
「顔色が悪いな。ダナが心配していたけど、体調がよくないんじゃないか?」
「へ、平気。ちょっと眩暈がしただけよ。離してくれる?」
必死に口角を上げて、エリシアはヴィクトルから距離を取る。彼は心配そうな表情で、エリシアが椅子に座るまで見守ってくれた。
さっきヴィクトルの手が触れた場所を、エリシアはどうしても意識してしまう。
本当の弟だと思って接していたけれど、彼はもしかしたらエリシアのことを女性として見ていたのだろうか。
それに記憶の中にある弟よりも、なんだか距離が近いような気がする。
こちらをうかがう視線がどうにも落ち着かなくて、エリシアは窓の外を見つめるふりをして視線を逸らし続けていた。
「エリシアお嬢様、紅茶をどうぞ」
目の前に、ことりとカップが置かれる。穏やかな低い声の主は、執事のザカリアスだ。
「あ、ありがとう」
顔を見ることができず、エリシアはうつむいたまま早口で礼を言う。いつも『お嬢様』と呼んでくれる彼が、エリシアのことを親しげに呼び捨てにしたのだろうか。
考えても全く分からないものの、寒くもないのに肌はずっと粟立っている。
口から飛び出してきそうなほど速い鼓動をなんとか落ち着かせたくて、エリシアはゆっくりとティーカップに手を伸ばした。
ソーサーから持ち上げようとした瞬間、ふわりと爽やかな香りが鼻をくすぐった。柑橘を使った、紅茶の香り。