愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
「私も、まさかあの本を知っている人がいるなんて思わなくて……とても驚きました」
「あんなに素晴らしい本なのに、何故か全然知られていないから、俺も嬉しいよ。そのハンカチも、とても素敵な刺繍だ」
「ありがとうございます。刺繍の腕には、少し自信があるんです」
 褒められて、エリシアははにかみつつ微笑んだ。
 その時、華やかな弦楽器の前奏が聞こえてきた。どうやら、新しいダンスの曲が始まったらしい。それに気づいたロジェリオは、エリシアに手を差し出した。
「俺と、踊っていただけませんか?」
「……っ」
 まさか彼にダンスの誘いを受けるとは思わなくて、エリシアは目を見開いて固まる。だけど、同じ本が好きだと言った彼とは縁を感じて、もう少し一緒にいたいと思った。それに人気のないここでなら、彼と踊っても目立つことはないだろう。
 エリシアは、ゆっくりとロジェリオの手を取った。
「……えぇ、喜んで」
 誰もいない庭で、二人はゆっくりと踊り始める。ロジェリオのリードは巧みで、エリシアはいつもより軽やかに踊れているような気がしていた。
「他には、どのシーンがお気に入りですか?」
 踊りながら、エリシアはロジェリオに話しかける。せっかく同じ本を好きな人に出会えたのだから、もっといろいろな話をしたい。
「そうだな……。森の中で道に迷った時、花の蜜を飲むシーンが好きだな。幻想的で美しいだろう」
「リュイルの花の蜜! どんな味がするのかしらって、今でも思っているんです」
「きっと、蜂蜜よりずっと甘いんだろうな。エリシア嬢の好きなシーンは?」
「私は、愛を込めた指輪を贈るシーンが好きです。とってもロマンティックなんですもの」
「あぁ、確かに胸を打つシーンだ」
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