愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
「わ、私も……もっとロジェリオ様のことが、知りたいです」
 勇気を出してそう返事をすると、彼は嬉しそうに笑った。花が咲くような微笑みを向けられて、エリシアの鼓動は高鳴る一方だ。
 その時、遠くからエリシアの名前を呼ぶ声が聞こえた。慌てて振り返ると、友人が手を振ってこちらに向かってくるところだった。飲み物をもらいに行くと言って戻ってこないので、探しに来てくれたのだろう。
 それに気づいたロジェリオは、スッとエリシアから離れる。
「ではまた。次に会う時を、楽しみにしている」
 耳元でそんな囁きだけを残して、彼はその場から立ち去った。
 駆け寄ってきた友人は一緒にいたのがロジェリオだと気づいていないようなので、エリシアもハンカチを拾ってもらっただけだと濁す。
 頬が赤いようだと指摘されて、会場の熱気にあてられたのかもしれないと誤魔化しつつ、エリシアはハンカチをそっと握りしめた。

 その後二人は何度か一緒に時間を過ごし、お互いのことをより深く知っていった。
 エリシアの両親は公爵家との縁を喜んで全面的に応援してくれたし、ロジェリオの両親もエリシアのことを歓迎してくれた。何もしなくても女性が寄ってくるロジェリオは、積極的な女性にぐいぐいと迫られ続けて半ば女性不審に近かったらしい。そんな彼が自らそばにいてほしいと望んだのがエリシアだということで、むしろようやく息子に好きな人ができたと大喜びされていた。
 好きな花や本のことだけでなく、ロジェリオとは考え方も似ていて、些細な会話すらとても楽しかった。
 そしてロジェリオと婚約を交わしたエリシアは、挙式の日を指折り数えて楽しみにしていた。
 彼となら、絶対に幸せになれる。心からそう信じていた。
 ――あの、悪夢のような惨劇が起きるまでは。
< 40 / 152 >

この作品をシェア

pagetop