愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 楽しげなロジェリオとは反対に、エリシアは言葉少なに対応する。また彼と踊れる日が来るなんて思ってもみなかったし、本当ならずっとこの手を握っていたい。だけど、これ以上ロジェリオと親しくなるわけにはいかないのだ。
 曲が終わると、次は自分と踊ってほしいとあちこちから令嬢が近づいてきた。これで自分の役目は終了だろうとその場を離れようとしたのに、ロジェリオはまだエリシアの手を握ったままだ。そして、こそりと耳元に顔を寄せられる。
「申し訳ないが、この場を離れるのに力を貸してもらえないか」
「え?」
 エリシアの戸惑いをよそに、ロジェリオは周囲に聞かせるように声を張った。
「エリシア嬢、顔色がよくないな。体調が悪いなら、ダンスの途中でも教えてくれればよかったのに。涼しい場所で、少し休もう」
「え、えぇ」
 きっと彼は、集まってくる令嬢の輪から逃げ出したいのだろう。エリシアも、これ以上この場にとどまって注目を浴びるのは避けたかったので、ロジェリオの手に従って会場を出ることにした。
 さすがに追いかけてくる人はなく、二人は庭のベンチに腰を下ろした。記憶の中にある出会った場所とは違うけれど、似たような状況にエリシアの鼓動は速くなる一方だ。
「ありがとう、おかげで会場を抜け出すことができた」
 そう言ってロジェリオは小さく息を吐く。エリシアと踊ったのだから次は自分と、といった様子で近づいてきた女性たちの数はかなりのものだった。もしもあのまま囲まれてしまったら、断るだけでも大変な労力だっただろう。
「いえ、私もあの場に長くとどまるつもりはありませんでしたから。ジャケットは乾いたでしょうか?」
「あぁ、まだ少し湿っているけど……問題ない」
「本当に、申し訳ありませんでした」
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