愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 あらためてエリシアは、深々と頭を下げる。出会いを避けるつもりだったのに、こうして一緒にいることが信じられない。だけど、またロジェリオの命を奪われるような事態は、絶対に避けなければいけない。
「では、私はこれで」
「待って、エリシア嬢」
 立ち上がって歩き出そうとしたエリシアの腕を、ロジェリオが掴む。決して強い力ではないけれど、指先のぬくもりを感じてしまって動けなくなる。エリシアよりも少し体温の高い彼の手は、いつだってあたたかかった。大きなその手に、包み込むように手を握ってもらうことが大好きだったことを思い出して、胸が詰まる。
「は、離してください」
「すまない。でも、きみともう少し話していたい。……だめだろうか」
「今夜は疲れてしまって……。もう帰るところだったのです。ですから、申し訳ありません」
 ロジェリオの顔を見ないようにうつむいたまま、エリシアは平坦な声で断る。離れていった手のぬくもりを、恋しいと思ってしまう自分が嫌になる。
 あの時ぶつからなければ、そしてハンカチが違うものだったなら、こんなことにはなっていなかったはずなのに。唇を噛みしめたエリシアの耳に、微かなため息が聞こえた。
「そうか……。それなら残念だけど、仕方ない」
 顔を上げれば、ロジェリオはどこか切なそうな顔でエリシアを見つめていた。そんな顔をさせてしまったことに、胸の奥が罪悪感で疼く。
 だがロジェリオは、気を取り直したように笑みを浮かべた。
「では、また日をあらためて会うことはできないだろうか」
「え……」
「きみのことをもっと知りたいんだ、エリシア嬢。そして俺のことも、もっと知ってほしい」
 かつてと同じような言葉をかけられて、エリシアは言葉に詰まる。ロジェリオは、照れくさそうに鼻の頭をかいた。
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