愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた

雨の四阿で

 あとからあとからこぼれ落ちる涙を拭いながら、エリシアはやみくもに足を動かす。息が上がってきたので一度足を止めて周囲を見回すと、いつの間にか庭に出ていたことに気づく。
 会場内からは人々の明るい声が聞こえるものの、庭は静かだ。小さくしゃくりあげたあと、エリシアは噴水そばのベンチに腰を下ろした。
 これからどうすればいいのだろうか。ロジェリオに合わせる顔はないし、帰るためには迎えの馬車を呼ばなければならない。両親は夜会でロジェリオとの仲が進展することを期待しているだろうから、言い訳も考える必要がある。
「……もっと、嫌われるようにふるまえばよかったのかしら」
 ため息まじりにエリシアはつぶやく。彼の家柄が目当てで、結婚したら財産を食いつぶすような悪女を演じていれば、彼の方から離れていってくれたかもしれない。そんなことを思うものの、今更どうしようもない。
 大好きな人に想いを告げられたのに、それを断らなければならないなんて。だけど死に戻ったエリシアは、今度こそロジェリオを守ると決めているのだ。
 涙を拭こうとしたエリシアは、今日もかすみ草の刺繍が施されたハンカチを持っていることに気づいて苦い笑みを浮かべる。お気に入りのハンカチだったけれど、これはもう処分するべきなのかもしれない。見ているだけで、ロジェリオのことを思い出してしまうから。
 ハンカチで目元を押さえても、涙は一向に止まらない。ロジェリオの告白を断ったのはエリシアの方だけど、エリシアもまるで失恋をしたような気分だ。
 その時、こちらに近づいてくる足音が聞こえてエリシアはぴくりと肩を震わせた。
「……っ、エリシア嬢」
 駆け寄ってきたのは、予想通りロジェリオだった。あちこち走り回っていたのか、額には汗が浮かび、呼吸も荒い。
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