愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
「ロジェリオ様」
「追いかけるような真似をして、すまない。だけど、どうしても気になって……。本当にきみが俺のことを嫌いだと言うのなら、すっぱりと諦めようと思った。だけど、きみは俺を拒絶するようなことを言いながら泣いていた。その理由が知りたいんだ」
「理由なんて……ありません。ただ、私はあなたに相応しくないと思っただけ」
「どうしてそんな風に思うんだ。誰かに何かを言われた?」
 ロジェリオの言葉に、エリシアは黙って首を横に振る。涙の理由なんて、説明できるわけがない。
 まさか追いかけてくるなんて思わなかったと思いつつ、エリシアは必死に言葉を探す。だけど何を言えばいいのか分からない。
 その時、肩にぽつりと冷たいものが降ってきた。思わず顔を上げると、いつの間にか空は星も見えないほどに分厚い雲がかかっていて、次々と雨粒が降ってくる。
「っ、雨だ。エリシア嬢、ここにいては濡れてしまう。ひとまずこっちへ」
 そう言ってロジェリオは、エリシアの手を引くと走り出した。
 あっという間に雨足は強くなり、二人は慌てて近くの四阿に飛び込んだ。ざぁっと激しい雨音のせいで、会場の喧騒も聞こえなくなる。
「すごい雨だな、しばらく動けそうにない」
 空を見上げたロジェリオは、困ったようにため息をつくとベンチに座るようにと促した。だがエリシアは、その場から一歩も動くことができずにいた。
 突然の雨、二人きりの四阿――。
 それは、ロジェリオが亡くなった時とよく似た状況だった。
 今の二人は婚約していないし、ここは自宅でもない。お茶の準備なんてないから、彼が毒を盛られることはない。あんな恐ろしいことが、起こるはずがない。
 分かっていても、エリシアの脳裏にはロジェリオの最期の姿が浮かんで離れない。
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