愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
「私が返事をしないことで、仲違いすると思ったのかしら」
「そうかもしれないな。俺がシアを嫌うことなんて、絶対にないのに」
 肩をすくめつつ、ロジェリオはエリシアの髪を一房指に絡め、そっと口づけた。
 そこに、執事が戻ってきた。彼は手帳を取り出して、ここ数週間の間に届いた手紙についての記録を確認する。
「やはり、エリシアお嬢様へのお手紙は、一通も届いておりませんでした。ただ、少し気になる噂を耳にしたのを思い出しまして」
「噂?」
 ロジェリオが促すと、ザカリアスはうなずいた。
「近頃、山道で盗賊に荷馬車が襲われる被害が多発しているらしいのです。その中には、郵便配達の馬車も含まれていたとか。もしかしたらお嬢様宛の手紙は、その被害に遭ったのではないでしょうか」
「盗賊……ねぇ。確かに被害が出ているという話は聞いたことがあるが」
 腕を組んで、ロジェリオは低くつぶやく。エリシアへの手紙だけ狙ったように届かないなんて不審でしかないのだが、ザカリアスが握り潰したという証拠もない。
「その影響で到着が遅れているという可能性もありますから、もしもお手紙が届いた際にはすぐにお嬢様にお届けいたしますよ」
 にっこりと笑った執事の言葉に、エリシアは黙って目を伏せる。ロジェリオはまるで見せつけるようにエリシアを強く抱き寄せた。
「手紙にはエリシアへの愛をたっぷり綴ったのに、読んでもらえないのは残念だな。でも、こうして直接愛を囁ける方がいいか」
「でも、お手紙も欲しかったわ。きっと宝物になったもの」
「これからも、何通だって書くよ。今度はきっと、ちゃんと届くことを祈ろう」
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