愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 後半はまるで執事に聞かせるように言って、ロジェリオはエリシアの額にそっと唇を押し当てた。そして、黙って笑顔のままじっと見守っているザカリアスを冷たい目で見上げる。
「エリシアとゆっくり過ごしたいから、外してくれるかな。心が狭い自覚はあるが、俺と一緒に過ごす時には別の男の姿をエリシアの視界に入れたくないんだ。たとえそれが、使用人であってもね」
「かしこまりました。では、失礼いたします」
 ザカリアスは綺麗なお辞儀をして部屋を出て行ったが、ドアが閉まる直前に見えた横顔は、凍りつくほど冷たかったような気がした。
 背筋が寒くなり、思わず両腕をさすったエリシアの肩を、ロジェリオがそっと抱いてくれる。
「エリシア、おいで」
 優しい声に引き寄せられるように、エリシアは彼に身体を預けた。胸に手を当てれば、力強く打つ鼓動が感じられる。不安に押し潰されそうな日々を過ごしているけれど、ロジェリオの鼓動を感じるとエリシアは安心できる。
「やっぱりシアのことが心配だ。なるべく早く、一緒に暮らしたい」
 耳元で囁かれた言葉に、エリシアは眉尻を下げてうなずく。
「私も、できることならそうしたいけど……。婚約しているとはいえ、挙式もしないうちから一緒に住むのは難しいと思うわ。伝統を重んじる公爵家なら、なおさらね」
「シアを危険な目に遭わせるくらいなら、そんなこと構っていられない。なんとか両親を説得してみるよ」
 真剣な口調でロジェリオはそう言ってくれるものの、現実的には難しいだろうとエリシアは考えていた。
 この国では、新婦が嫁ぐ時は専用の馬車に乗って新郎のもとへ向かうという風習がある。馬車は新郎側が用意することが一般的で、花嫁の乗った馬車は、街の人々からも祝福を受けながら花婿のもとへと向かうのだ。
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