たとえ世界から「ごめん」が消えたって、
「で?なんで別れたわけ?」
「なんでって言われても」
「見た感じうまくいってるようにしか思えないくらいベタベタの甘々な雰囲気だったし結構長続きしてたじゃん1年だっけおまえら仲良しこよしバカップルにしか見えなかったんだけど」
そこまで息継ぎせず文字を並べた弘也はぐいっとジョッキを傾けた。
「……性格不一致?」
「そんなもんかよ」
ていうか疑問形って、と眩暈を起こしたみたいに頭を抱える彼はどうやら早くも酒が回ってきたようだ。
「そんなもんだよ」
ぽつりとこぼれた音と同時に、汗をかいたジョッキの中の氷がカランと揺れた。
僕の声みたいに、虚しく。
「うそつけ」
彼の鋭い視線が、僕を射抜く。
目つきが悪いのは生まれつきだと以前言っていたが、今僕にぶっ刺さるそれは、これまで向けられたどの視線よりも尖っているように感じた。
だから、弘也には、嘘などつけなかった。
「……好きだった、と思う」
「それも嘘だね」
「……、」
やはり目つきも勘も鋭い。
ああ、僕の負けだ。
「今も好きだと想う」
現在形に訂正したら、彼は満足そうに口角を上げた。
それを見届けた僕はうつむいて、目を閉じる。
まぶた裏のスクリーンに、彼女と過ごした365日が鮮やかに投影された。