たとえ世界から「ごめん」が消えたって、
「すみません」とか、
「ごめんなさい」とか、
「申し訳ありません」とか。
ありとあらゆる謝罪の言葉は、
この世から消えてしまった。
いつもと違ったあの日から、一言も耳にしていない。
家族も、友人も、彼女も、大学の教授も、テレビのおはようお姉さんがたくさん噛んでも、整備不良により電車が遅れても、
誰の口からも謝罪の言葉が述べられることはなかった。
僕の頭がおかしくなったのかと一時は疑ったけれど、僕はまともで、おかしくなったのはこの世界だった。
「かわいそう」
それは意味を持たなくなってしまった謝罪の言葉たちに対して。
彼らはもう、僕の頭の中でしか生きていない。
いや、僕は彼らを一度たりとも生かしてやったことはなかったね。
ほんとうに、かわいそうな、言葉たちだ。
どうして僕なんかにその運命を託されてしまったのだろう。
彼らにいのちを吹き込むことなどできない、こんなクズなんかに。
それは、死んでいるのと、同じだと思った。