目と口は同じぐらいにものを言う
 そこにはネクタイを少し緩め、疲弊しきった柊斗が立っていた。1週間の激務に揉まれたのか、肩は落ちて表情にも疲労が滲んでいる。営業職の彼はなかなか大変らしい。人に好かれる性格をしているため向いているとは思うが、疲れないわけでないのだろう。

「おかえり、柊斗。お疲れ様」

 そう声を掛けた瞬間だった。
 顔を上げた柊斗と目が合ったと同時に、彼の『目』が輝いた。

「千夏だ…!!」

 目尻が優しげに下がり、黒目がちで潤んだ瞳が私を映して嬉しそうに揺れる。
 これだから、彼の目を見るのはやめられない。感情がストレートに視線に現れるその綺麗な瞳は、いつだって私の心をこれでもかと満たしてくれる。

「うん、千夏だよ。ほら、もうすぐご飯できるから手洗っておいで?」

 私がそう言って微笑むと、柊斗はじーっと私の『唇』に視線を落とした。
 ごくりと喉が鳴る音が聞こえそうなほどの熱い視線。

 1週間分の「唇不足」を今すぐ補給したがっているのが丸分かりだ。けれど、彼は健気にもそれをぐっと堪えた。こちらから何も言っていないのにえらいものだ。

「うん! すぐ洗ってくる!」

 さっきまでの疲れはどこへやら。ぶんぶんと目に見えない尻尾を振りながら、柊斗は嬉しそうに洗面所へと駆けていった。本当に分かりやすくて可愛い人だ。

 彼の足音を聞きながらキッチンに戻り、私は仕上げのソースを作り始めた。
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