たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 *

 その日、会社を出たのは定時を一時間過ぎた頃。式典の打ち合わせが予想以上に伸びたためだ。


「疲れたぁ」


 ひとり暮らしをしているマンションに着くと、仕事着のままベッドに倒れ込んだ。

 まだ月曜日なのに、なかなかハードな一日だった。金曜日までもつだろうか……。

 今日はもうこのまま寝てしまいたい。

 目を閉じようとしたが空腹でお腹が鳴り、むくっと起き上がる。のそのそと移動しキッチンへ向かう途中で、床に転がっている何かにつまずいた。


「痛っ……」


 足元を見ると、ペットボトルが転がっている。昨夜飲んでそのまま置きっぱなしにしていたものだ。

 他にもテレビのリモコンやメイク道具、買い物をしたときのレシート、洗濯したのかしていないのかわからない服などが床に散乱しているが、それらをうまく避けて移動する。

 キッチンまで辿り着くと、冷蔵庫を開けた。


「なにもない……」


 最近買い物をサボっていたせいで、夕食に使えそうな食材が入っていない。

 とりあえず、冷蔵庫の中で転がっている缶ビールを見つけて手に取り、蓋を開けると喉に流し込んだ。


「うっま〜」


 平日は、翌日の仕事に響かないようアルコールを取らないようにしている。だから今飲んだのもノンアルだが、労働のあとは格別に美味しく感じる。

 けれど、空腹は満たされない。


< 10 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop