たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 一緒に過ごすことができてよかったなんて、もしかしてけっこう大胆なことを言ってしまったのでは?

 私は途端に焦り始める。


「あ、いえ、その……。深い意味はなくて」


 自分を落ち着けるため深呼吸をしてから再び口を開く。


「第二秘書の頃を含めると成海社長の秘書になって二年が経ちますが、あまりゆっくりとお話をする機会がなかったので」


 成海社長は基本的にひとりで行動することが多いし、事務連絡にしてもメールで済ませた方が効率的だという彼の希望で、本当に急用のとき以外は直接的な連絡は行わない。

 訳あって結婚をし、一緒に暮らしてからもお互いのペースで生活しているので家の中でもあまり顔を合わさなければ言葉を交わすことはない。

 だから、これまで成海社長とはそれほど交流がなかった。


「今回の出張に同行させていただき、成海社長が普段からどのように視察を行っているかなどを知ることができて、とても勉強になりました」


 決して妥協することなく、どんな業務にも真摯に向き合う姿勢は普段から尊敬しているが、今回の視察でもそんな彼の一面を見ることができた。


< 110 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop