たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
気付いた気持ち side雅貴


 *

 ……やってしまった。

 完全にタイミングを間違えた。

 梅本を連れて福岡出張に行ったのが昨年のクリスマスのこと。

 あれから年が変わり一月になったが、梅本の様子がおかしい。

 家の中ですれ違っても素早く横を通り過ぎていくし、声を掛けてもこちらを見ない。完全に避けられている。

 原因はわかっている。俺のせいだ。

 クリスマスの日の出張の夜、滞在していたホテルで梅本から言われた言葉がうれしかった。 

 成海商船の社長に就任し、実質的な後継者に選ばれても、心のどこかでは“俺でいいのだろうか”という気持ちが常にあった。

 もちろん成海商船を率いる社長として、仕事は完璧にこなしているつもりだ。

 けれど、どうしても兄と比べてしまう自分がいる。

 兄の方が向いているのではないか。


『経営者として会社全体の舵を取るよりも、自分で船を操縦して広い海を航海したい』


 そんな兄の希望を父は当初受け入れなかった。父の中では成海商船の跡継ぎは兄と決めていたのだろう。

 だが、兄の意思は固く、父への説得を繰り返した。最終的に父はそんな兄の熱意に負け、後継者候補から兄を外した。

 そして、代わりに選ばれたのが弟の俺だ。


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