たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
俺はどんなに頑張っても兄がいる限り成海商船の社長にはなれない。そう思っていたので、降って湧いたチャンスに心が躍った。
成海商船をこれまでよりも大きく、強い会社にしてみせる。
そう意気込み、邁進した。
成海商船に入社後は海外事業部に配属され海外支社を転々としながら仕事を学び、その後は海外事業部長も経験した。
三十二歳で副社長に着任し、一昨年には父から引き継ぐ形で社長に就任した。
成海商船の社長として認められるにはひとつのミスも許されない。
そんな緊張感の中で過ごすうちに私生活も整っていなければ不安になり、常に気を張っている状態が続いた。
疲れは溜まっていたし、悩みもあったが、他人に隙を見せるようで、弱音すら誰にも吐けなかった。
そんな俺が社長になってから初めて胸の内をさらせたのが梅本だった。
俺はつまらない人間で、自分に自信がない。
出張先のホテルでふとそんな弱音がこぼれた。
酔っていたのだろうか。
直前にアルコールを飲んだが、自分では酔っている感覚はなかった。
ただ何となく、梅本には本音で話ができた。
それは彼女の持つ穏やかな雰囲気のせいかもしれない。