たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
社会人になってから仕事一筋だったので、恋愛事とはしばらく距離を置いていた。
とはいってもまともな恋愛経験はなく、大学生の頃に告白をされ何となく付き合った彼女が数人いただけ。
自分から想いを寄せたのは梅本が初めてかもしれない。
社長室の執務デスクで仕事をしながら、ふと梅本のことを考え始めたら止まらなくなった。
会社で仕事以外のことを考えるなんて俺らしくない。
深呼吸をして、集中をした。
そのとき、内線が鳴った。受話器を取り、耳に当てる。
『社長、お疲れさまでございます』
今まさに頭の中を占めていた女性の声が聞こえ、柄にもなく動揺してしまう。
悟られないよう冷静に口を開いた。
「どうした」
『会長がお呼びです。おそらくグループ会社統廃合の件かと』
そう告げる梅本の声はいつも通りだ。
「わかった。すぐに向かう」
受話器を戻し、イスから立ち上がる。
再来年度を目処に、効率性の向上のため組織を見直す案が出ている。
不要な組織や部門は廃止し、再編成をすることで世界の中で闘うための競争力を維持し続ける狙いだ。
非常に重要で大規模な再編成を予定しているため、入念に取り組まなければならない。
俺はジャケットの前ボタンを締めると、扉へ向かい、社長室を後にした。