たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
その夜、帰宅したのは夜の十時。
八時から会食があったため、この時間だ。
それにしても、今日は疲れた。
靴も脱がず、玄関に座り込んでしまう。ネクタイを緩めながら、思わずため息がこぼれた。
普段から分刻みのスケジュールで動いているし、帰宅が遅くなることもよくある。それでもここまでは疲れない。
やはり会長ーー父親からの呼び出しがあったからだろう。
あの人の前ではいつも気を抜けない。
グループ会社統廃合の進捗状況について尋ねられたのだが、説明をするだけでも神経を使うため、要件が済み会長室を出たあとは精神的な疲労がどっと押し寄せた。
そのあとは月に一度の経営会議に参加し、退社後も取引先企業の社長たちとの会食と気の抜けない時間か続いた。
「疲れた……」
思わずポロっと弱音がこぼれる。そのとき、リビングの扉が開いた。
「成海社長、お帰りなさいませ。大丈夫ですか!?」
梅本が驚いたような声を上げる。そして、こちらに向かって駆け寄ってきた。
最近は俺を避けるような行動が多かったが、玄関に座り込む俺を見て、つい体が動いたのだろうか。
梅本が心配そうな表情で俺を見る。