たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 手を伸ばして、お菓子のかけらを取ってやる。


「な、成海社長!?」


 梅本が驚いたいように目を見開いた。

 頬がわかりやすく紅潮し、そんな彼女を見て自然と口元が緩んだ。


「さっきまで食べていたお菓子がついてたぞ」


 指でつまんだ小さなかけらを彼女に見せる。


「えっ、あ! すみません」


 焦る梅本がおかしくてさらに笑ってしまう。

 普段ならこんなことで笑ったりはしないのに、俺はどうしてしまったのだろう。

 梅本といると心が和む。

 何事も完璧を求め、常に気を張っている自分がバカらしく思えてきた。

 たまには肩の力を抜いてもいい。

 そう気付いた瞬間、心がすっと軽くなる。
 

「ありがとな」


 無意識に梅本の頭に手を置き、髪の毛をくしゃりと撫でた。

 彼女が困惑した表情を浮かべる。


「成海社長?」

「風呂に入ってくる」


 俺は梅本から手を離して背中を向けた。

 リビングを後にした俺の口元が自然と緩む。

 もう認めてもいい。

 俺は、梅本に惹かれている。



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