たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「社長とランチをご一緒したことは一度もないです」


 事実を告げると、霧矢さんが不思議そうな顔で私を見た。


「付き合っていた頃も?」

「えっ。あ、えっと……」 


 契約結婚の私たちには、もちろん交際期間はなかった。だからランチを一緒に取るような仲ではなかったので正直に答えたのだが、さすがに交際中は一緒にランチをするものなのだろうか。


「仕事中は一緒にランチは取りませんでした」


 何となく濁して答えた。すると、霧矢さんが納得したように頷く。


「そうよね。成海くんはそういう人よね。仕事とプライベートは完全に分けていそう」

「そうですね」


 あははと笑って誤魔化す。

 再びうどんを食べ始めた霧矢さんを見て、私もサバの味噌煮に箸をつける。 

 危なかった……。

 成海社長との結婚が偽りのものだとバレなかっただろうか。 

 契約結婚という名の結婚をして一ヶ月ちょっとが経つ。

 けれど、会社でも自宅でも結婚前とそれほど変わらずに接しているので夫婦という事実を忘れそうになる。

 ……いや、変わったことならひとつあった。

 ふと思い出すのはクリスマスの日に出張に同行したときのホテルでの出来事。

 成海社長にキスをされた。


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