たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「成海くんのこと本当に好き?」

「えっ」


 突然の質問にとっさに答えられないでいると、霧矢さんが言葉を続ける。


「あなたたち本当に夫婦なの?」


 霧矢さんが私を見て首を傾げる。


「私、社内で誰と誰が付き合っているってなんとなくふたりの雰囲気を見てわかるのよ。そういう恋人や夫婦特有の甘いオーラが梅本さんと成海くんからは感じないのよね」


 またしても鋭い指摘にドキッと胸が跳ねた。 

 甘いオーラなんて出せるわけがない。私と成海社長は本当の夫婦ではないのだから。

 それでも霧矢さんに誤解をされたままではいけないので、夫婦であることを認めてもらわなければならない。

 けれど、どうすれば?


「私が奪っちゃおうかな」


 霧矢さんがぽつりとこぼす。そして、トレーを持って立ち上がった。


「それじゃ、私はこれで」


 山菜うどんはまだ残っているがもう食べる気はないのか霧矢さんは席を立ち、トレーを戻すと社員食堂を後にした。

 微かな声だったが、“奪っちゃおうかな”と彼女は言った。

 以前玉置さんから聞いた霧矢さんは成海社長が好きというのは本当かもしれない。

 いつから想いを寄せているのだろう。


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