たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
大学卒業後の進路に成海商船を選ぶくらい、霧矢さんは成海社長のことが好きなのかもしれない。
そんな彼女に対して、申し訳ないことをしたとは思う。
成海社長から提案されたとはいえ、彼に対して特別な想いを持っていない私が結婚してしまったのだから。
わずかな罪悪感を抱えたままお昼休憩を終えて秘書室に戻った。
しばらく仕事をしていると、成海社長から社長室に来るよう連絡が入る。
呼び出されるなんて珍しい。緊急の用事だろうか。
急いで社長室へ向かい、扉の前でふと立ち止まった。
成海社長の顔を見るとあの日のキスを思い出して、平常心ではいられなくなる。
けれど今は仕事中だ。
ふぅと深呼吸をしてから、目の前の扉をノックした。
「どうぞ」
成海社長の声が聞こえたので、「失礼します」と扉を開ける。
「来たか」
窓際の執務デスクに座る成海社長と目が合った。その瞬間、ドキッと心臓が跳ねる。
……落ち着け、私。
心の中で唱えてから入室した。
「そこに座って」
イスから腰を上げた成海社長の視線が応接用のソファへと向かう。
指示通り、そこに腰を下ろした。