たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「社長。どのようなご要件でしょうか」


 尋ねると、成海社長は「ちょっと待て」とロッカーへと向かう。

 高級感のある木目調のロッカーから成海社長は紙袋を取り出した。それを持ってこちらに来ると、私とはテーブルを挟んだ向かい側のソファに腰を下ろす。


「午前中に来た客からこれを貰った」


 成海社長が紙袋から取り出した正方形の箱のデザインには見覚えがある。

 世界的パティシエがプロデュースする洋菓子店のチョコレート詰め合わせだ。


「よかったら一緒に食べないか」

「いいのですか?」


 成海社長の秘書になってから、こういう誘いは初めてだ。


「梅本、甘いものが好きだろ」


 話した覚えはないのに、どうして知っているのだろう。

 確かに私は甘いものが好きだ。特にチョコレートが。


「家のゴミ箱によく甘いお菓子の袋が捨てられているからな。それに、朝ご飯に板チョコを食べているときもあるだろ。まぁ、あれは健康を考えてやめた方がいいとは思うが」

「すみません」


 まさか見られているとは思わなかった。


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