たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「そういえば、霧矢さんから私たちが夫婦には見えないと言われました」
「どういうことだ?」
成海社長に尋ねられ、先ほどより詳しく説明をする。
「霧矢さんいわく、私たちには恋人や夫婦特有の甘いオーラを感じないそうてす」
まぁ、本物の夫婦ではないので感じなくて当然なのだけど。
ふと、ランチのときに彼女が呟いた言葉を思い出した。
『私が奪っちゃおうかな』
あれは、私から成海社長を奪うという意味だろう。
さすがにそれは成海社長には言えない。
「甘いオーラか」
成海社長は静かに呟き、ソファの背もたれに背を預けた。
「確かに、俺と梅本にはないな」
「ですよね」
本物の夫婦ではないので当然だ。
「もしかすると、そう思っているのは霧矢だけではないかもしれないな」
背もたれに寄りかかっていた背を離し、成海社長は少し前屈みになると膝の上で手を組んだ。
「夫婦に見えないと噂を立てられるのも面倒だ。梅本、来週の土曜は何か予定があるか」
「土曜ですか? いえ、特には」
「それじゃあ夫婦の時間を作ろう」
「夫婦の、ですか?」
どういう意味だろう。
きょとんとする私に成海社長が言う。