たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「俺とデートをしよう」
「デ、デート!?」
思わず大きな声を出してしまった。外に聞こえなかっただろうか。
「それで甘いオーラが出るとは思わないが、夫婦っぽいことをしていたらそれなりには見えるかもしれないからな」
だからって成海社長とデートだなんて……。
「場所は俺が決めておく」
成海社長はそう言うと、素早くイスから立ち上がった。そのまま執務デスクへと向かう。
イスに腰を下ろし、仕事を再開させるようだ。
「そのチョコは梅本にあげるから食べてくれ」
ちらっと成海社長の視線がこちらに向けられる。
箱の中にはまだたくさんのチョコレートが残っているが、成海社長はもう食べないのだろうか。
尋ねようとしたが、真剣な表情でパソコン画面と書類を交互に見ている彼に声は掛けられなかった。
私も秘書室に戻ろう。
チョコレートの入った箱の蓋を閉め、それを両手に持って立ち上がった。
「成海社長。私はこれで失礼します」
「ああ」
成海社長にぺこりと頭を下げてから、チョコレートの入った箱を持って社長室を後にした。