たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「覚えてますよ!」
そこまで記憶力は悪くない。それに、成海社長も本当に私が名前を忘れたとは思っていないはず。きっと冗談で言ったのだろう。
そのおかげで雰囲気が和んだ気がした。
「……雅貴さん、ですよね」
時間が経てば経つほど呼ぶのに緊張してしまう気がして、どうせなら今ここで呼んでしまおうと思った。
「正解」
成海社長の唇がゆったりと弧を描く。それを見て、私もふっと笑みが浮かんだ。
その後も渋滞が続き、お昼過ぎ頃にようやく目的地へと到着した。
予約してある温泉宿のチェックイン開始が午後三時なので、それまでは近くのアウトレットで時間を潰すようだ。
駐車場に車を止め、少し歩いてアウトレットへと向かう。
様々な店のショッピングバッグを持つ人々で混み合う中、私たちはまずは食事をすることにした。
「どのお店にしましょうか」
フロアマップをみながら、食事場所を探す。
アウトレットの中にはフードコートを初めたくさんのレストランがあるので迷ってしまう。
「恵麻は何が食べたい?」
成海社長に尋ねられ、「そうですね……」とフロアマップを見つめる。