たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
もしかして、お寿司という気分ではなかったのだろうか。
「他の食べ物にしますか?」
尋ねると、雅貴さんは深くため息を吐いた。
「そうじゃなくて。俺は恵麻の食べたいものを聞いたんだ。俺の好きなものじゃない」
そう言って、雅貴さんは私の右手を離した。
「恵麻は何が食べたい? 寿司ではないだろ」
確かに私はそれほどお寿司が食べたいわけではない。
雅貴さんの好物だから、彼のために選んだ。
私が食べたいのは……。
視線がフロアマップに載っているハンバーガーへと向かう。
「今日は社長と秘書じゃない。夫婦だ」
雅貴さんの言葉に顔を上げて彼を見つめた。ふっと微笑まれ、私は自分に正直に口を開く。
「このお店のハンバーガーが食べたいです」
フロアマップを指さして、雅貴さんに伝えた。
「ハンバーガーか。なかなかのボリュームだな」
「好みじゃないようでしたら別のにしますので」
「いや、ハンバーガーにしよう。美味しそうだ」
雅貴さんは私の手からフロアマップを取ると、それを見て歩き始める。
「こっちだな」
そのあとを慌てて追いかけた。
「あ、でも。お店はフードコートにあって……」
「そうだな。ここからだと近そうだ」