たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
お義母さまは私にずっと話し掛けてくれていたし、家の中の至るところに飾られているお義母さまの趣味である絵画や生け花の作品も見せてくれた。
結婚後も私を気にかけてくれているようでたまに電話をくれるなど良くしてもらっているし、お正月に新年の挨拶で伺ったときも美味しい手料理をご馳走してくれた。
成海商船の会長であるお義父さまとは以前から顔見知りだけれど、会社内で会うと前よりも気さくに声を掛けてくれるようになった。
「お兄さまの誕生日はいつなのですか?」
ふと気になって尋ねる。雅貴さんのお兄さまといえば、クイーン・ブルー号の船長をしている成海郁真さんだ。
すると、途端に雅貴さんの表情が曇る。
「兄の誕生日を恵麻が知る必要はない」
「ですが……」
「悪いが、俺の前であまりあの人の話はしないでほしい」
冷たい声でそう言うと、雅貴さんは歩くペースを速くする。
そのあとを追いかけながら、そういえば以前も同じようなことを言われたと思い出した。
確か、就航記念セレモニーの夜に雅貴さんが私の客室を訪れたときだ。