たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「雪白室長、どうしましたか」


 近くまで来た彼女に尋ねると、凛とした声で返される。


「成海社長が呼んでいたわよ。すぐに行って」

「わかりました」


 社長は今、控室になっている客室で仕事をしているはず。時間になったら呼びにくるよう指示を出されていたが、突然の呼び出しとは何か急用ができたのだろうか。

 雪白室長に軽く頭を下げてからこの場を離れる。エレベーターに向かい、社長の控室になっている客室の階へと昇った。


「失礼します」


 ノックをしてから入室。

 バルコニー付きのスイートルームは開放感のある広々とした空間で、窓からは明るい光が差し込んでいる。

 成海社長は、部屋に備え付けのデスクでノートパソコンを広げていた。


「梅本」


 片手でノートパソコンを閉じた成海社長が私をじっと見据える。


「さっき霧矢(きりや)から連絡があった」

「霧矢さんですか?」


 広報部に所属する霧矢祥子(しょうこ)さんのことだろう。

 成海社長と同じ歳で、大学の同級生だそうだ。成海社長の恋人という噂もあるほどふたりは親しい。

 そんな彼女も今日は広報として式典のサポートをしている。


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