たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
考え事をしていたせいで前をよく見ていなかった。雅貴さんが気付いて、私がぶつからないようにしてくれたのだろう。
「ありがとうございます」
「プレゼントを考えるのもいいが、しっかりと前を見て歩かないと危ないだろ」
「はい」
まるで小さな子供を注意するような言い方に、しゅんと落ち込む。
「それで、プレゼントは決まったか?」
「はい。鍋をあげようと思って」
「鍋か。それだと、さっき通った道にキッチングッズが置いてある店があったな」
「そこへ行ってもいいですか」
「もちろん」
雅貴さんはそう言うと私の腰に回していた腕を離し、今度は私の指に自身の指をさっと絡め、優しく握った。
その行動に驚いて雅貴さんの顔を見上げると、ふっと微笑み返される。
「行くぞ」
そのまま歩き出す彼と手を繋ぎながら、私の心臓は飛び出してしまうのではないかと思うくらいドキドキしている。
先ほど腰に腕を回されたときもドキッとしたけれど、それ以上に胸が高鳴る。
突然手を握られて平常心でいられるわけがない。
けれど、振り解くわけにもいかず、手を握られたまましばらく歩き、辿り着いたのはフランス生まれのキッチングッズが揃うお店。