たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
そこで雅貴さんは繋いでいた手を離してくれた。
ようやくまともに息ができた気がする。
店内には色鮮やかな鍋が並んでいて、母が好きな赤色の小さな鍋を購入した。
そのあと父と妹のお土産を選びに行こうとしたところで、雅貴さんも欲しいものを思い出したらしくしばらく別行動をすることにした。
お互いに目的のものを購入し、合流する。
そろそろホテルのチェックインの時間になるので、アウトレットを後にした。
十五分ほど車を走らせた場所に今夜の宿泊先がある。
広大な庭園に囲まれた、落ち着いた雰囲気のホテルだ。
宿泊手続きを済ませ、スタッフに案内されたのは別館にある特別室。
大きな窓からは雄大な山並みが見え、備え付けの内風呂は地下から汲み上げた源泉掛け流しの天然温泉が二十四時間楽しめるらしい。
雅貴さんにはお似合いの部屋だけれど、私なんかが泊まってもいいのだろうか。
贅沢な部屋に思わず恐縮してしまう。
「夕食まで時間があるから大浴場に行かないか」
部屋で少し休んでいると、雅貴さんが提案した。
本音を言うと、アウトレットで歩き過ぎた足が悲鳴を上げているのでゴロンと横になって一休みしたいところだが、雅貴さんの前でそんなことは言えず……。