たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「そうですね。行きましょう」
 

 それに、せっかくの旅行なのだからだらだら過ごすのはもったいない。

 雅貴さんの後に続いて大浴場へと向かった。

 男湯と女湯で別れ、上がった方から先に部屋へ戻るようにした。

 女湯は時間帯のせいかまだそれほど混んでおらず、ゆっくりと体を洗うことができた。そのあとで温かなお湯につかる。

 今日一日の疲労が解けていくような心地の良さに、思わず感嘆のため息がこぼれる。

 こんなにゆったりとお湯につかるのは久しぶりだ。

 足の疲労も和らいだようで、雅貴さんに誘われて大浴場に来てよかった。

 ホカホカした体に浴衣と、その上から茶羽織をはおり、部屋に戻る。

 一月という季節もあり、廊下は少しひんやりとしていた。

 部屋に着くと、雅貴さんはすでに戻ってきていて、座椅子に座ってくつろいでいる。
 

「おかえり」


 出迎えられ、彼とテーブルを挟んだ向かいの座椅子に腰を下ろした。


「あの部屋着は持ってこなかったんだな」


 雅貴さんがふっと笑いながらそう言った。

 一瞬何のことかわからなかったが、ハッと思い出す。

 私がいつも着ているよれよれの部屋着のことだろう。




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