たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「おはようございます」

「おはよう」


 彼に挨拶をしてからキッチンに向かう。そして、空のペットボトルとお菓子の空袋をゴミ箱に捨てた。

 お腹が空いたが今から何かを作って食べている余裕はない。

 あと三十分後には家を出ないと行けないから。


「朝食は取らないのか?」


 キッチンで水を一杯だけ飲むと、それを見ていた雅貴さんに声を掛けられた。


「はい。時間がなくて」

「最近起きてくるのが遅い日が多いな。体調でも悪いのか」

「いえ、そういうのではないです」


 ただ寒くて布団から出られず、いつの間にか二度寝をして慌てて起きているだけだ。

 それなのに体調不良を心配してくれる雅貴さんの優しさに心が揺さぶられる。

 今年に入ってから、私に対する彼の態度が少し変わったように思う。

 気のせいかもしれないが、物腰が柔らかくなった気がする。それに、私を見つめる目がとても優しく感じる。


「パンでよければあるが食べるか?」


 雅貴さんはイスから立ち上がり、キッチンに来ると紙袋からベーグルを取り出した。

 朝一でランニングへ行き、その途中で立ち寄るお店で購入したパンだろう。

 美味しそうだし、食べたいけれど……。


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