たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
雅貴さんは背中を向けると、社長室の方へと歩いていった。
今、髪を撫でられた?
先ほどの彼の行動が信じられず呆然とたたずんでいると、後ろからぽんと肩を叩かれる。
驚いて振り向くと、私を見てにこにこと微笑む玉置さんが立っていた。
「見ちゃいましたよ〜、梅本さん」
彼女の反応からして、何を見たのかは聞かなくてもわかる。
雅貴さんが私の髪を撫でたところを目撃したのだろう。
恥ずかしいが、こういうときは動揺を見せてはいけない。何事もなかったように平常心を装う。
「おはよう、玉置さん」
彼女に挨拶をしてから、すたすたと歩き秘書室に入る。すでに出勤している同僚たちに挨拶をしながら、自分の席に向かった。
そのあとを玉置さんが付いてくる。
私がイスに座ると、彼女も隣の席に腰を下ろした。
パソコンを立ち上げている間も隣から視線を感じるので、とうとう耐えきれなくなり玉置さんを見る。
すると、彼女がにこりと口角を持ち上げた。
「今日は社長と一緒に出社したんですね」
「うん、そうだね」
「私、安心しました。梅本さんと成海社長が本当に夫婦だとわかって」
「えっ」
きょとんとする私に玉置さんは顔を近づけ、内緒話をするような小さな声で言う。