たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
すると、雪白室長がきょとんとした顔を見せたあとで首を横に振る。
「成海は成海だけど、社長じゃなくてお兄様の郁真さんよ」
「郁真さん?」
彼の名前が出た途端、雪白室長の頬がほんのりと赤くなる。
「実は、前から郁真さんのことが好きなの」
「えっ! そうなのですか?」
雪白室長の好きな人は雅貴さんではなかった。郁真さんだったんだ。
その瞬間、ホッとしてしゅるしゅると力が抜けていく。
「成海社長の専属秘書をしていた頃だから三年くらい前かしら。郁真さんをお見かけして、一目惚れをしてしまったの。そのことを成海社長に伝えて、郁真さんの連絡先を教えて欲しいって頼んでみたけど断られちゃって」
……ん?
もしかして、玉置さんが目撃したのはこのシーンだったのかもしれない。
雪白室長は雅貴さんに連絡先を教えてほしいと頼んでいたわけじゃなくて、雅貴さんを通して郁真さんの連絡先を知ろうとしていた。
「でも、郁真さんのことがずっと忘れられなかった。そんなとき、就航記念セレモニーがあって、キャプテンとして乗船していた彼と話をすることができたの。すごく気さくで明るくて、おもしろい人で素敵だったわ」