たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 キャンセルされているのなら、海外からの招待客たちが泊まるホテルにバスが到着するはずない。

 このままだと彼らはここへ来られず、式典に参加できなくなってしまう。

 どうしよう……。

 予想外の出来事に頭が真っ白になる。

 けれど、すぐに気持ちを切り替えて解決策を考える。

 先ほどバス会社に連絡をしたとき、代わりのバスを手配してもらえるか確認したところ今日はもう空きのバスはないと言われてしまった。

 十月の三連休の中日というのもあり、観光のため全てのバスが出払っているそうだ。同じ理由で、おそらく別のバス会社も無理かもしれない。

 そのとき、ひとりの男性がふと頭に浮かんだ。

 昨年まで成海社長が乗る社用車のドライバーをしていたが、定年を機に退職した六十代の峰田(みねた)さんという男性だ。退職後は、友人が経営する都内のタクシー会社に再就職している。

 峰田さんは、成海社長の第二秘書だった私を実の娘のように可愛がってくれて、退職するときには何か困ったことがあったら連絡してと言ってくれたことを思い出す。

 バスよりもタクシーの方が素早く手配できるかもしれない。


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