たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
その夜、ベッドに寝転がりながら、どうやって郁真さんに雪白室長の連絡先を渡そうか考えた。
郁真さんとは仕事のときに会ったことがあるだけで、プライベートではまだ一度も会ったことがない。
義理の兄になったとはいえ、それほど親しい間柄でもないのに、どうやって雪白室長の連絡先を渡そう。
雅貴さんに頼んでみる?
でも、彼の前で郁真さんの話は厳禁だ。
だから雅貴さんには頼れない。
どうしよう。
雪白室長には秘書としての仕事をみっちりと教え込んでもらったのでとても感謝している。だから、役に立ちたいのだけれど……。
そのとき、トントンと部屋の扉がノックされる音が聞こえた。
「恵麻。少しいいか」
雅貴さんの声だ。
私は驚いてベッドから飛び上がる。
こんな時間に彼が私の部屋に来ることはないのに、どうしたのだろう。
「はい。大丈夫です」
そう答えてから気がついた。
私の服装はあのよれよれの部屋着だ。
「入るぞ」
扉が開いて、雅貴さんが姿を見せる。彼もすでにお風呂を済ませたようで、上下紺色のスウェット姿だ。
雅貴さんが着るとスウェットでも上品に見えるのは、生まれ持った品格だろう。