たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「俺には無理だな」
ふと雅貴さんが自嘲的に笑い、ベッドの端に腰を下ろした。
「俺はなんでも完璧じゃないと気が済まない。恵麻みたいに要領良く生きられたら、きっともっと楽なんだろうな」
そんな言い方をするということは、雅貴さんはなんでも完璧を求める生き方に疲れているのかもしれない。
「恵麻はどこか兄貴に似てるよ。あの人も子供の頃から何でも要領良くこなす人だったから。俺とは正反対だ」
そう呟いて、雅貴さんは視線を足元に落とした。
背中を丸くさせて俯く彼からは、いつものような覇気が感じられない。
どこか寂しそうで、寄り添ってあげたくなる。
「雅貴さん……」
隣に腰を下ろし、彼の背中をさすろうとした、そのときーー。
「いや、こんな話をするために俺はここへ来たわけじゃなかった」
雅貴さんがハッとしたように顔を上げた。彼の背中を撫でようとしていた手を私は慌てて引っ込める。
「来週の日曜に成海家が集まって食事会をする予定があるのだが、恵麻も参加してほしい」
「食事会ですか」
「ああ。毎年この時期に集まっているが、今回は親戚たちに恵麻を紹介するのも兼ねた食事会にしたいと父から言われた。俺たちはまだ結婚式を挙げていないからな」
「そうですね」