たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 契約結婚をした私たちにとって結婚式はそれほど重要ではなく、仕事が落ち着いた頃に挙げる予定だとお互いの家族には説明し、納得してもらっている。

 今度の食事会が私の紹介を兼ねたものなら、参加しないわけにはいかない。  


「わかりました。私もぜひ参加させてください」


 でも、成海家の食事会かぁ……。

 緊張しそうだ。

 親戚の方々も合わせて総勢何人が集まるのだろう。

 そのとき、ふと思いついた。

 もしかしてその食事会で郁真さんに雪白室長の連絡先を渡せるかもしれない。


「あの、雅貴さん。食事会には郁真さんもいらっしゃいますか」


 そう尋ねると、雅貴さんの視線がすっと冷たくなるのがわかった。

 その瞬間、自分の発言を後悔する。

 彼の前で郁真さんの話をしてはいけないんだった。

 うっかり忘れて、食事会に郁真さんが来るかどうかを尋ねてしまった。


「兄貴に来てほしいのか」


 冷たい視線のまま、雅貴さんの鋭い声が部屋に響く。


「あ、いえ、その……。来てほしいといいますか、結婚してからまだ一度もご挨拶できていなかったので、お話ができたらいいなと思いまして」


 雪白室長の連絡先を渡したいからと正直に言えないので、適当にごまかした。けれど、一度しっかりと挨拶をしたいのは本音だ。
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