たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 すると、雅貴さんがため息のような息を吐く。 


「兄貴に挨拶なんてする必要はないが、食事会には来るそうだ」

「いらっしゃるんですね」


 よかった。雪白室長の連絡先を渡せそうだ。

 でも、そのときはなるべく雅貴さんには見えない方がいいかもしれない。

 なんとなく私が郁真さんと関わることを良く思っていないようだから……。

 こっそり渡せるだろうか。


「恵麻」

「は、はい」


 食事会のときに郁真さんに連絡先を渡せるタイミングはあるのかを考えていると、雅貴さんに名前を呼ばれた。

 さっきまでの冷たい雰囲気はもう消えている。 


「食事会のときにこれを着けるのはどうだ」 


 そう言って雅貴さんは手に持っていた白色の小さな紙袋を私に手渡した。


「俺からきみにプレゼント」

「私にですか?」


 何だろう。

 受け取ると、中には見覚えのある花のブローチが入っている。

 先日行ったアウトレットで見つけたものだ。欲しかったが、値段が高くて諦めたのだけれど……。


「どうして、これを……」


 雅貴さんはなぜ私がこのブローチを欲しいとわかったのだろう。そして、どうして私にくれるのだろう。

 そんな疑問が伝わったのか、雅貴さんが口を開く。


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