たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「手に取って、欲しそうに眺めていた姿を離れた場所から見てた。買わずに店を出たから、そのあとで恵麻と別行動をしたときに買ってきた」


 別行動……。

 確か、父と妹のお土産を買いに行こうとすると、雅貴さんも欲しいものができたと言うので別行動をすることにした。あのとき買いに行ってくれたんだ。

 そんな彼の優しさに胸がじんと熱くなる。

 そして、雪白室長との面談のときに気付いた自分の気持ちは本物なのだと思い知る。

 私は雅貴さんのことが好きだ。


「本当はその日の夜に渡したかったが、恵麻が眠そうだったからな」

「すみません」


 だからあのとき雅貴さんは、まだもう少し起きていてほしいと言ったのだろう。

 そんな彼の気持ちを知らずに先に寝てしまった自分を後悔した。


「ありがとうございます、雅貴さん。わざわざ店に戻って買ってきてくださったんですね。とてもうれしいです」


 ブローチを手に取る。やはりかわいい。

 自然と表情が緩んでしまう。


「何でだと思う?」

「えっ」


 不意に隣から聞こえた声に私は雅貴さんに視線を向ける。すると、まっすぐに私を見つめる彼と目が合った。


「どうしてわざわざ店に戻ってまでして、俺が恵麻にこれを買ったと思う?」


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