たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「郁真さん」
そっと声をかけると、彼がぱっと振り向く。
「きみは雅貴のお嫁さんの、えっと……恵麻ちゃん」
「はい、恵麻です。よろしくお願いします。ご挨拶がまだでしたので」
「そうだよね、ごめん。結婚の挨拶も新年会もいつも俺のスケジュールが合わなかったから」
郁真さんが申し訳なさそうに両手を合わせる。
「いえ、お忙しいのはわかっていますので。郁真さんはクイーン・ブルー号の船長さんですもんね。就航記念セレモニーのとき、私もあの場にいたので」
「そっか。恵麻ちゃんは秘書課にいるんだっけ」
「はい」
頷くと、郁真さんは何かを考えるような素振りを見せたあとで、さっとこちらに近づいてきた。
「じゃあさ、雪白さん知ってるよね」
「室長ですか? はい、もちろん」
突然、郁真さんの口から雪白室長の名前が出て驚いてしまう。
すると、彼は少し言いづらそうに口を開いた。
「彼女の連絡先って知らないかな」
「えっ」
それをこれから郁真さんに渡そうと思っていたところだ。
「就航記念セレモニーのときに雪白さんと話す機会があったんだけど、素敵な女性だなってあの日から彼女のことが頭から離れなくて」
……もしかして、ふたりは両思い!?