たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 気付いた瞬間、胸がドキドキしてきた。


「あ、あの!」


 震える手で雪白室長の連絡先が書かれた紙をバッグから取り出す。


「これ、雪白室長の連絡先です。実は、郁真さんにお会いすることがあったら、連絡先を渡してほしいと室長に頼まれました」

「本当に!?」


 郁真さんの目が大きく見開く。 


「それって雪白さんも俺に少しは興味があるってことかな」


 おそらくそうだと思う。でもそれを私の口から言ってもいいのかわからず、微笑むだけにした。けれど、郁真さんには伝わったらしい。


「両想いかもしれないってことか」


 郁真さんは、雪白室長の連絡先が書かれた紙を受け取ると、嬉しそうに口元を緩ませる。


「ありがとう、恵麻ちゃん。さっそく連絡してみるよ」

「はい。雪白室長、よろこぶと思います」


 なんとかミッションをこなせた。さらにふたりがお互いを想い合っていることにも気づき、なんだか私までうれしくなる。

 それと同時に胸がきゅっと痛んだ。

 私と雅貴さんの関係と比べてしまう。私たちは夫婦だけれど、想いは通じ合っていない。私の一方通行だ。


「いいですね、両想いって……」


 だから、雪白室長と郁真さんが羨ましい。そんな気持ちが溢れて、気づくとそう呟いていた。

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