たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「恵麻が食事中も兄貴のことばかり見ていたのには気付いていた。兄貴が席を立ったタイミングできみも部屋を出て行ったから気になって追いかけてきた」


 雅貴さんが両手で私の肩を掴んだ。


「もう一度聞く。兄貴とここで何をしていた」


 きっと答えなければ離してもらえない。

 雪白室長の恋愛事情を話すのは気が引けるけれど、雅貴さんが他人の秘密を軽々と周囲に話すような人ではないと思い、打ち明ける。


「雪白室長の話をしていました」

「雪白の?」
 

 雅貴さんがきょとんとした顔を見せる。


「雪白室長から郁真さんに渡してほしいものがあると頼まれて、それを渡していました」

「それは何だ?」

「雪白室長の連絡先です」


 答えると、雅貴さんは軽くため息を吐いた。


「彼女はまだ兄貴に気があるのか」


 そういえば、雅貴さんは以前雪白室長から郁真さんの連絡先を教えてほしいと頼まれたのだと思い出す。


「それで、渡せたのか」

「はい。郁真さんも雪白室長の連絡先を知りたかったみたいで、よろこばれていました」

「えっ」


 雅貴さんが目を丸くさせる。


「ということは、兄貴も雪白のことが?」

「おそらく」
 

 私は深く頷いた。 


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