たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
すると、突然肩をぐいっと引かれ、雅貴さんに引き寄せられる。
「よかった」
背中に回された腕が私をきつく抱きしめた。
「兄貴に恵麻を取られるかと思って焦った。そうじゃなかったんだな」
雅貴さんがホッとしたように息を吐く。
まるで私を郁真さんに取られたくないと言われているようで胸がドキッと高鳴った。
好きな人に抱きしめられているのもあり、動揺から胸の鼓動が早くなる。
「ま、雅貴さん」
彼の腕をとんとんとんとたたいた。それでも私を抱きしめる腕は離れない。むしろ一層強くなる。
「さっき兄貴と恵麻がキスをしているように見えた」
「えっ。キス!?」
雅貴さんからはそう見えたのだろうか。あれはただ突然顔を寄せられただけで……。
「私、郁真さんとキスなんてしていません」
雅貴さんに誤解されないようにしっかりと伝えた。すると、彼の腕が私から離れていく。
「それじゃあどうして兄貴は恵麻にあんなに顔を近づけていたんだ」
「それは……」
真っ直ぐに見つめられながら問われ、私は首を傾げた。
「わかりません。なぜでしょう」