たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
あのときの彼は私を自身の方へと引き寄せ、珍しく焦ったような様子を見せていた。そのあとで、私を郁真さんに取られたくないと受け取れるような発言をしていた。
それって、つまり……。
雅貴さんの気持ちに気付いてハッとなる。
私の勘違いではなかったの?
頬がじわりと熱くなる。
「気付いたようだな」
雅貴さんがふっと微笑む。
「好きだよ、恵麻。契約結婚のはずが、いつの間にかきみが大切な存在になっていた」
まさか両思いだったとは思わず、うれしさと驚きの感情で心の中がぐちゃぐちゃになる。
大きく目を見開き、だらしなく口をぽかんと開けたまま何も言葉が出てこない。
すると雅貴さんの手が伸びてきて、私の頬にそっと触れた。
「頼むから、何か言ってくれ」
「えっ、あ、すみません」
雅貴さんは自分の気持ちを私に打ち明けてくれた。今度は私の番だ。
「私も雅貴さんが好きです」
その瞬間、彼が驚いたように目を開き、私の頬に触れていた手を引っ込める。
おそらく雅貴さんも両思いだとは思っていなかったので、私の答えが意外だったのだろう。
「郁真さんが、雅貴さんの気持ちを確かめようとしたのは私がきっかけなんです。私が、雅貴さんとの関係に悩んでいると思って、あんな行動をしたのかと」