たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
チョコよりも甘い時間
*
「ーー起きろ」
シャッという音と共に目が覚める。
薄っすら目を開けると、カーテンが開かれた窓からは明るい光が差し込んでいた。
完全には覚醒しきれていないまま視線をゆっくりと横にずらしていくと、腕組みをしてこちらを見下ろす雅貴さんと目が合う。
「いつまで寝てるんだ」
呆れたようなため息を吐かれた。
「もう九時だぞ」
そう言われて枕元のスマートフォンを手に取り今の時間を確認する。確かにもう九時だ。
でも、今日は土曜日で仕事は休み。早起きをする必要はないはず。
「出掛ける約束をしていただろ」
「……っ!」
その瞬間、眠気が吹っ飛び、頭がすっと冴える。
そういえば、雅貴さんに誘われて百貨店に行く約束をしていた。
バレンタインの時期に合わせて、チョコレートスイーツが集結するイベントが期間限定で開催されているらしい。
チョコ好きの私のために誘ってくれたのだろう。それなのに約束を忘れて寝坊するなんて最低だ。
「すみません」
慌ててベッドから飛び起きる。そんな私を見て雅貴さんが静かに呟いた。
「寝癖がひどいぞ」
「えっ」
慌てて手で髪に触れる。確かにボサボサだ。
昨夜は眠すぎて、適当に髪を乾かしてからベッドに入ったからだろう。